
こんにちは、絵描きのひつじです。
モネの絵好きですか?
私は光が溢れるモネの絵が大好きです。
彼の絵には、光が踊り、空気が香るような魅力がありますよね。
そんなモネが普仏戦争を避けるためにロンドンへ避難し、
その後30年の時を経て再び訪れ、
霧の街ロンドンで数々の傑作を描いたことをご存じでしょうか?

今回は、モネが見たロンドン、
そして彼が描き上げた光と霧の物語を紐解いていきます。
モネの視点から見たロンドンを知れば、きっと彼の絵がもっと特別に感じられるはずです。それでは、始めましょう!
目次
モネの光に対するアプローチ:ロンドンに渡る前の作品

クロード・モネは、光の表現に対する独自のアプローチで、絵画に革新をもたらしました。
彼の作品には、光の変化が物体や風景に与える影響を探求し、色彩と筆致を駆使してその瞬間的な印象を捉える方法が確立されています。
この時期、モネはまだ印象派を創り上げる前段階にありましたが、彼の光に対する感覚はすでに独自のものになっていました。

Claude Monet – Jardin à Sainte-Adresse
光の変化を捉えた初期の作品モネは、光の微細な変化が風景や物体にどれほどの影響を与えるかに注目しました。
彼の初期の作品では、光と色の関係を探るため、何度も同じ風景や物を描きました。
この時期、モネはまだ写実的な描写にとらわれていましたが、光が物をどのように変化させるかに対する彼の関心はすでに表れており、色彩を自由に重ねていく技法に初めて触れた時期ともいえます。
戦争から逃れたロンドン滞在

1870年、普仏戦争が勃発、モネは妻カミーユと息子ジャンを連れてフランスからイギリスへ避難しました。
ロンドンでの生活は、慣れない環境の中での苦労がありましたが、彼にとってテムズ川や霧に包まれる街並みは、心を揺さぶる風景でした。
この滞在中、モネは画商ポール・デュラン=リュエルと出会い、後の印象派を支える大切な関係を築きます。
ただし、避難生活では制作活動に十分な時間を割くことができず、この時期の作品は多くありません。
それでも、この体験は彼の創作にとって
大きなインスピレーションの種となりました。
「印象、日の出」光の探求、

モネの《印象、日の出》(Impression, Sunrise)(1872年)は、光の微細な変化を捉えるために描かれた作品で、後の印象派運動の名前の由来となった代表作です。
モネはこの作品で、日の出の瞬間の海と港の風景を描き、特に光の反射や霧、空気の透明感を表現することに注力しました。
彼は短い筆致を使い、青やオレンジ、ピンクなどの色彩を巧みに重ねることで、時間帯による自然の変化を捉え、視覚的な印象を最も重要視しました。
この作品は、モネが光の探求をどれほど深く追求していたかを示すものであり、印象派の誕生を象徴するものとなったのです。
再訪と創作活動の再燃

それから約30年後の1899年、モネは再びロンドンを訪れました。
このとき彼は、かつて目にした霧の街の風景を新しい視点で描くため、情熱を注ぎました。1899年から1901年にかけて、彼は3度ロンドンを訪れました。
「ウォータールー橋」「チャリングクロス橋」「国会議事堂」(他、タワーブリッジ 、ヴィクトリア駅 、テムズ川沿いの霧の風景、)を題材にした連作に取り組みました。その数は100点を超え、短期間でこれほど多くの作品を手がけたのは、ロンドンの風景が彼をいかに魅了したかを物語っています。
《ウォータールー橋、霧の中》 (Waterloo Bridge, Mist)


この作品は1903年に描かれたもので、モネが霧の中のウォータールー橋を描いたものです。霧でぼんやりとした橋が浮かび上がり、幻想的な雰囲気を作り出しています。橋自体ははっきりとは見えませんが、霧の中での色の変化や光の具合がモネらしいタッチで表現されています。色使いも柔らかく、青やピンク、紫が使われていて、霧が空気をやわらかく包み込む様子が伝わってきます。

《国会議事堂、霧の中》 (Houses of Parliament, Fog)

1900年ごろに描かれたこの作品では、ロンドンの象徴である国会議事堂が霧に包まれて描かれています。霧の中で建物の輪郭がぼやけ、ぼんやりとした印象だけが残ります。モネは細かいディテールにこだわらず、霧の中での光の拡散を重視し、色彩が一体感を生んでいます。霧が光を包み込み、ロンドンの街がまるで夢の中のように見えます。


《チャリングクロス橋、霧の中》 (Charing Cross Bridge, in the Fog)

1901年に描かれたこの作品も、テムズ川にかかるチャリングクロス橋を描いたものです。霧の中で橋が少しだけ浮かび上がるように描かれ、川の水面もほのかに輝いています。モネは、霧が作り出す幻想的な雰囲気に魅了され、霧に包まれた風景がどのように見えるのかを追求しました。橋のディテールが隠れてしまう代わりに、色の変化と光の表現が強調されています。
これらの作品は、モネが霧の中での光と色の微妙な変化に注目し、それを自分の手法で捉えたものです。ロンドンでの滞在中、霧や煙の中で景色がどのように見えるかを楽しみながら、彼は風景をただの形ではなく、一瞬の印象として表現しました。

モネが描きたかったのは、単なる建物や街並みの写実的な描写ではなく、
刻々と変わりゆく光と大気の表情でした。
霧に包まれた橋や建物が柔らかい色彩に染まる様子。それはモネにとって、二度と同じ瞬間を見ることができない特別な美でした。
作品を見比べて観るとよくわかりますね。
その時にしか見れない光の情景が作品それぞれに収められています。観ていて飽きません。
モネが惹かれたのは霧と〇〇?

モネにとってロンドンの霧は、まさに芸術の素材そのものでした。
友人への手紙には
「霧がロンドンを美しくする。霧の中ではすべてが素晴らしい」
と記されています。彼は、霧と光の相互作用によって生まれる幻想的な風景に心を奪われたのです。
しかし、モネが注目したのは霧だけではありませんでした。
彼はロンドンの工業化がもたらした大気汚染、煤や煙が霧に混じり合い、空気を独特の色彩で染め上げる様子にも魅了されていました。


これについてモネは、妻アリスに宛てた手紙の中で、次のように綴っています。
「1 日中変わる光の様子に加えて、ロンドンの霧と大気汚染が風景を茫漠とさせ、色彩豊かに変化する風景に魅了され、時に焦燥感も感じる」
彼にとって、大気汚染という一見ネガティブな現象ですら、芸術として捉えられる対象だったのです。この視点こそが、彼の作品に唯一無二の深みを与えています。
光と霧の中に見た世界

モネのロンドンシリーズは、ただの都市風景を超えています。
それは、自然と人間の営みが織りなす光と色彩のドラマです。
テムズ川にかかる橋が霧の中にぼんやりと浮かぶ様子や、
日の光がその瞬間だけ見せる色の変化ーーそれらはモネが追い求めた
「永遠に変化し続ける美」の象徴でした。
まとめと感想

モネがロンドンで描いた連作は、光と霧が織りなす詩的な世界を私たちに見せてくれます。
普仏戦争という苦しい経験を経て、30年後に再びロンドンを訪れたモネは、若い頃の感動を新しい形で表現しました。
日常の中の何気ない風景にも、美しさを見つけられること――モネの作品はそんな希望を私たちに届けてくれます。
ロンドンの霧が色づく瞬間にモネが見たものを想像しながら、ぜひ彼の絵を眺めてみてください。きっと、日々の風景の中にも新たな魅力が見えてくるはずです。
素敵な作品を残してくれたモネにありがとうを言いたいひつじでした。
それではまた!
