芸術家:オディロン・ルドン:闇から光へ

こんにちは、絵描きのひつじです。


突然ですが、

オディロン・ルドン、皆さんはどんな印象を持っていますか?
私は以前、フランスの美術館で彼の作品に初めて出会い、その独特の雰囲気に驚きました。

今日はルドンの作品と彼自身の人生に触れながら、

その「変化」「内なる光」についてお話ししたいと思います。

オディロン・ルドンとはどんな人?

Odilon Redon – Woman in a gothic arcade- woman with flowers

オディロン・ルドン(1840年-1916年)はフランス象徴主義を代表する画家であり、幻想的で詩的な作品を通じて人々に深い感動を与え続けました。彼の作品は、

初期の「黒の世界」から、後期の色彩豊かな花々や幻想的な風景へと変化していきます。

孤独な幼少期、厳しい家族環境、そして独学で成長した彼の人生は、まさに芸術的な変革の物語そのものでした。

ルドンの作品には、常に深い内面を反映させる力がありました。彼の絵は単なる視覚的な表現だけでなく、見る者に強い感情的な影響を与えるような「力」を持っています。

彼は他の象徴主義者と同様、夢や幻想を通して人間の感情や精神を表現しようとしましたが、そのアプローチは非常に個性的であり、見る者に思索を促すものでした。

里子に出された幼少期

ルドンは、ボルドーの中流家庭で生まれましたが、生後わずか2日目にして、ボルドー近郊のペイルルバードという小さな町に里子に出されました。ここでは、親元を離れ、

11歳まで孤独な少年期を過ごしました。この経験は彼の内面世界を形成し、その後の芸術的な表現に深い影響を与えたと言われています。里子に出された背景には、母親の情緒不安定さや、家族間の複雑な人間関係が指摘されることもありますが、ルドン自身の作品には、

この孤独感疎外感がしばしば表されています。

家族からの反対

ルドンの父親は彼に建築家あるいはエンジニアとしての道を望み、絵画を学ぶことに強く反対していました。この家庭環境は、彼の心に深い影響を与えましたが、

それでもルドンは絵画に対する情熱を捨てることはありませんでした。ついに家族の期待を裏切り、独学で絵を学び始めました。ルドンの父親との関係は非常に複雑であり、父親は息子の選んだ道に対して否定的でしたが、その後のルドンの成功が何よりの証となりました。家族からの反対を乗り越え、自分自身の道を歩み続けたことが、後の作品に深い感情と力を与えました。

初期の「黒の世界」:闇と夢の表現

Odilon Redon, Il y eut peut-etre une vision premiere essayee dans la fleur (There was perhaps a first vision attempted in the flower, 1883

ルドンの初期作品には、暗く神秘的なテーマが多く見られます。

炭や版画を使った「黒の世界」は、ルドンの内面の闇を表現したものであり、彼自身の苦悩や孤独感を反映しています。「夢見る眼」「微笑む蜘蛛」など、

彼の作品は常に不気味で幻想的な世界を描いていますが、その中にもユーモアや温かみを感じることができます。特に、「悪」をテーマにした作品は象徴主義や幻想主義の影響を受け、見る者に強い印象を与えました。


Chimäre

キメラ、火を吐く女神?妖怪?、、私は聖書信じてるので、ルドンの初期作品は、ほぼ悪霊達だと思ってます。

ルドンの悪の花

ルドンはフボードレールの詩集『悪の華』から大きな影響を受けました。1890年代に、この詩集のために絵を描き、詩の暗さや美しさを視覚化します。ルドンの作品は、

人間の複雑な感情、罪、死、そして美を象徴的に表現しています。

ルドンの絵の特徴は、暗い美学を使っている点です。黒い線や影で、ボードレールの詩の深みを描き出しています。それから、象徴的なイメージがたくさんあります。例えば、目は自己を内観すること、花は美と死の二面性を示すなど、ルドンは詩と連携して、「Bénédiction」や「Le Balcon」からインスピレーションを得て、それらを絵にしました。

『悪の華』は初版から話題になり、裁判で一部詩が削除される事件が起こり、それが逆に詩集の知名度を上げました。

ルドンは詩と絵画の新しい関係を見せることで、象徴主義に影響を与えたのです。

彼の絵は、詩の感情をビジュアルで探求するから、私たちに自分と世界の関係を考えさせます。

フランス版まっくろくろすけがそこに居た。ひつじのエピソード

私自身がフランスの美術館でルドンの「微笑む蜘蛛」と出会ったとき、展示が美術館の端の隅にひっそりと飾られているのを見つけました。暗がりの中に潜んでいるような蜘蛛の姿が、まるで物陰でこちらを伺う「まっくろくろすけ」のようで、強烈な印象を受けました。

まるで私に話しかけてきたかのようなその作品に、ルドンのユーモアを感じずにはいられませんでした。私にとって、「まっくろくろすけ」という言葉が自然と浮かんだのは、まさにフランス版の「まっくろくろすけ」のように見えたからです。

救済と聖書モチーフ

Christ and the Samaritan Woman

 Jésus et la Samaritaine

ルドンは、暗黒の時代を経て救済を求めるようになり、その作品に聖書や神話のモチーフを取り入れるようになりました。特にキリスト教の物語や「サマリアの女」といったエピソードは、ルドンが自身の内面的な癒しを求めていた証拠とも言えます。ルドンが信仰していた宗教については明確な記録は残されていませんが、彼の作品には救済や希望を求める精神が強く表れています。

ルドンの聖書的なモチーフは、彼自身の内的な探求心を反映しています。彼の作品には、光と闇、苦しみと癒し、そしてその先にある平和と安らぎが共存しているのです。

Odilon Redon – Icarus – Pola Museum of Art

色彩の目覚め:黒から光へ

Breton Village

ルドンの作品は、1878年に結婚し、家族を持ったことを契機に大きな転機を迎えます。彼はそれまでの黒一色の世界から、色彩豊かな世界へと進化を遂げるのです。印象派の影響を受けたルドンは、パステルや油彩を使った鮮やかな色彩を取り入れ、幻想的な花々や風景を描きました。この変化は、彼の内面の変化を象徴しているとも言えるでしょう。初期の暗い世界が、次第に色と光に満ちたものへと変わり、ルドンはより明るい未来を感じ取るようになったのです。

この変化は、彼の作品に新たな深みと美しさをもたらし、幻想的な風景や神秘的な花々が生まれました。ルドンにとって、色彩の変化は単なる技法の進化ではなく、心の中に広がる「光」を表現する手段だったのです。

晩年:色彩豊かな花々と内なる平和

Bouquet de fleurs des champs

ルドンの晩年には、幸福感と平和に満ちた作品が多く生まれました。彼は色彩豊かな花々や蝶々を描き、自然界の模倣ではなく、心の中に広がる幻想的な世界を表現しました。特に、色鮮やかな花々の美しさには、彼自身の内面的な平和が反映されているように感じます。ルドンが描く花々は、単なる植物の描写にとどまらず、彼の心の中に広がる「内なる世界」の象徴となっているのです。

Ophelia among the Flowers, The National Gallery, London

また、ルドンは1889年に生まれた次男アリに大きな喜びを見出しました。アリの誕生は、ルドンの創作活動に大きな影響を与え、彼の作品に新たな生命力を吹き込みました。この時期、彼の絵画はよりポジティブで希望に満ちたものへと変わりました。

Composition Flowers

まとめと感想:闇と光が共存する芸術の魅力

ルドンの人生と作品を通じて、私たちは「変化する力」「内なる豊かさ」を感じることができます。彼の作品は、暗黒の中にある美しさや力強さを描き、またその中から希望や光を見出すことができるのです。ルドンの芸術は、

私たちに「闇を乗り越えた先に必ず光がある」というメッセージを伝えてくれているように感じます。

ルドンが描いた幻想的で詩的な世界は、私たちに深い感動と希望を与え、

心に秘めた「静かな力強さ」を感じさせてくれます。

私たち一人ひとりが光に包まれる日が来ることを心から願います。

それでは、今日はこの辺で!
ひつじでした。