こんにちは、絵描きのひつじです。
アートや風景画に興味を持つ皆さんに、今日は風景画の基本的な要素である
「近景」「中景」「遠景」についてお話ししたいと思います。
これらの要素は、風景画を構成する上で非常に重要です。作品の深みや視覚的な魅力を高める役割を果たし、観察者に立体感や空間感を提供します。
特に風景画の初心者の方々に役立つ情報として、ヨーロッパの風景画を例にその効果を詳しく解説していきます。
目次
風景画を三分割して考える
風景画を描くとき、画面を「近景」「中景」「遠景」の3つのレイヤーに分けて考えることで、自然な奥行きと立体感を表現できます。それぞれの特徴を見ていきましょう。
シンプルに頭の中で画面を三分割して観察しましょう。
1. 近景(Foreground)

- 特徴: 画面の手前部分にあたるエリア。観る人の視線を引き込む重要な部分です。細部の描写が求められ、色彩も鮮やかで強調されます。
- 例: 前面に広がる草花(岩、木の幹など。)
近景はアート作品の中で最も視覚的なインパクトを与える部分です。例えば、Claude Monet(クロード・モネ)の作品のように、強い色調や細かいテクスチャで描かれることで、視覚的な深みが生まれます。初心者でも、近景に焦点を当てることで画面的な興味を喚起することができます。この部分は観る者に「ここにいる」と感じさせるリアリティを提供します。近景では、色の鮮やかさや対比を強調することで、視覚的な「引き込み力」を最大化します。
2. 中景(Middle Ground)


- 特徴: 近景と遠景をつなぐ中間的なエリア。風景の中心となる部分で、遠近感や構図全体のバランスを意識した描写が求められます。
- 例: 広がる野原、建物(川の流れ)など。
中景は風景画のストーリーテリングを担う部分で、観る者が風景の全体的構造を理解する助けとなります。ここでは色彩のバランスやテクスチャの変化を考慮し、近景から遠景への移行を滑らかにする必要があります。これは、風景の連続性や一体感を保つことに貢献します。
3. 遠景(Background)


- 特徴: 画面の奥にあるエリア。空や山、遠くの建物など、スケール感や空気感を表現します。大気遠近法を使って淡い色調で描かれることが多いです。
- 例: 青く霞む山々、雲が浮かぶ空など。
遠景は景観の広がりを示し、大気遠近法を通じて深遠さを伝えます。この部分を効果的に描くことで、作品全体の奥行き感が増します。カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(Caspar David Friedrich)の作品では、遠景が神秘性や広大さを強調し、自然の壮大さを表現します。色彩は淡く、青みがかったトーンで描かれ、視覚的な「距離感」を示す重要な要素です。
なんとなく三分割できましたか?
色彩の使い方:近景・中景・遠景で色を工夫する

各レイヤーの特徴を押さえたうえで、それぞれに適した色彩の選び方を解説します。
近景:鮮やかで目を引く色
- おすすめの色と使い方:
- 暖色系(赤・オレンジ・黄色):草花や落ち葉を描くときに使うと生き生きとした印象に。
- 濃い緑色や茶色:茂みや木々にリアリティを与える。
- 影には黒やダークブルーを混ぜる:コントラストが生まれ、立体感が強調されます。
近景は視覚的な引き込みを強化するために、色彩の対比を活用することが重要です。色の強さや鮮やかさは、観る者の目を引きつけ、作品の中心的な要素を際立たせます。
中景:調和を保つナチュラルな色
- おすすめの色と使い方:
- 柔らかい緑や黄緑:木々や草原を描く際に自然な広がりを演出。
- 中間的な茶色や灰色:建物や小道、土壌に控えめに取り入れる。
- アクセントに控えめな暖色系:例えば、遠くに見える赤い屋根や光を浴びたポイントに。
中景は近景の強さを引き立てつつ、遠景への移行をスムーズに行うための調和のとれた色使いが求められます。色彩のバランスが重要であり、風景の流れや一体感を保つことに寄与します。
遠景:淡く、青みがかった色
- おすすめの色と使い方:
- 淡い青や青緑:山や森を霞んだ雰囲気で描く。
- 薄い紫や灰色:夕暮れや霧の表現に効果的。
- 空にごく淡い黄や橙を加える:日の出や夕焼けで温かみを与える。
遠景は大気遠近法を使って、距離感と空気感を表現します。色の淡色化と冷色系の使用がポイントで、風景画に深みと広がりを与えます。
色彩の組み合わせで作る風景画の世界
緑の風景

Vincent van Goghの「Green Field」
近景には濃い緑色を使い、生い茂る草木を描きます。中景には黄緑を使って、草原の自然な広がりを表現します。遠景では淡い青を使って、遠くの山々や木々が霞んでいる様子を描きます。これによって、自然の空気感と深みが感じられます。
夕暮れの風景

Monet の「Getreideschober」近景にはオレンジや深い赤を使って夕日を反射する藁や地面を強調します。そして中景から遠景は淡くぼやけるように描くことで、夕闇が迫る時間の移り変わりや空気感が感じられ、夕暮れ時の温かみが漂います。
秋の風景

Winslow Homerの「Autumn Landscape with Trees」
ホーマーの作品では、近景に黄金色や深い赤色で秋の葉を描き、暖かい色調が生き生きとした印象を与えます。中景にはブラウンやオリーブ色を使って木々の幹を描き、遠景には柔らかな青や灰色を加えて、静寂で広がりのある風景を表現しています。この色のバランスが秋の深みと静けさを生み出しています。
ダイナミックな風景

Caspar David Friedrichの「The Snow-covered Field」
近景に黒い帽子と緑色のコートを着た男性が岩の上に立っています。背中を向けて鑑賞者を風景に引き込むようです。中景には 霧でぼやけた岩や木々、斜面が見えます。深みと神秘性を加える効果があります。遠景には濃い霧の中に山々がぼんやりと見えます。自然の広大さと人間の小ささを対比するようです。
雪景色

Caspar David Friedrich – Winterlandschaft
近景は 雪は白く、祈る人の服や松の木は暗い色調で描かれている。杖も暗めの色で、冬の寒さと孤独感を強調している。中景には 岩は灰色や茶色で、雪の白さとの対比が際立つ。十字架は暗い木の色で、自然の中の人間の存在感を示す。全体的に青みがかった寒色系が支配的。
遠景には霧を薄いグレーや青で、遠くの教会はその中でぼんやりと浮かび上がる。教会の色は暗く、自然と調和しつつも存在感を保つ。遠景の色は深みを持ち、冬の終わりなき広がりを感じさせる。
まとめ
風景画における「近景」「中景」「遠景」を明確に分けて色彩を工夫することで、画面に奥行きが生まれ、視覚的な魅力が増します。
それぞれのレイヤーの特徴に合わせた色の選び方を意識しながら、自分だけの風景を描いてみましょう!普段から風景を三分割で見る癖をつけると、観察力も上達し、絵画制作がより楽しくなります。
また、色彩の選び方や配置は、作品の雰囲気や感情を伝える重要な要素であり、練習と試行錯誤を通じて自身のスタイルを見つけることができます。
それでは今日はこの辺で、またお会いしましょう。ひつじでした。