箔押し技法、キラリと光る、それだけで絵が生きる

こんにちは絵描きのひつじです。

私の作品はキラキラしてるものが多いです。

「どうやって描いてるんですか? キラキラしてて、すごく不思議で…」

作品を見た方から、そう聞かれることが増えました。

透明感のある絵の中に、ほんの少しだけ入れた金のきらめき。

それは、「箔押し」という技法でつけた光です。

小さな光が、一枚の絵に「物語」を与えてくれることがあります。

たとえば、夜空にまたたく星。風にそよぐ着物の金の刺繍。陽の光を受けてきらめく水面。

そんな「光の演出」を、手仕事で加えられるのが箔押し(はくおし)技法です。

絵を描くことに慣れてきた頃、こんな気持ちが湧くことがあります。

「もっと自由に遊びたい」

「ただ色を塗るだけじゃなくて、何か別の質感を入れてみたい」

箔のきらめきは、まさにその答えのひとつ。

筆では描けない“光の表情”を、あなただけの作品に差し込んでくれます。

この記事では、金箔・銀箔などの「箔」を使った表現方法について、

初心者にもわかりやすく、絵画に取り入れる方法を紹介していきます。

「これって本物の金ですか? フェイクもあるんですか?」

そんな疑問にもこたえつつ、さまざまな箔の種類や使い方を見ていきましょう。

絵画に使える「箔押し」って?

箔押しとは、金属のような薄いフィルム=**箔(はく)**を、接着剤や熱、圧力などで画面に転写する技法です。

もともと伝統工芸や印刷物に使われていた技法ですが、最近では現代アートやクラフトの世界でも人気が広がっています。

特に、日本画・油絵・アクリル画といったジャンルでは、表現の幅を広げるアクセントとして使われるようになりました。

箔はどんな絵にも使える?

日本画に使う


風神雷神図屏風

箔といえば、やはり日本画。特に金箔・銀箔は、古くから使われてきました。

琳派や狩野派の作品では、背景に金を広げたり、雲や水の流れに散らすことで空間の深みを演出。

現代でも、雲母(きら)や砂子(すなご)などの伝統技法にヒントを得て、自由に組み合わせて使われています。

和紙の上に、絵の具と箔が共演する世界は、静かにきらめきながら豊かさを語ります。

油絵に使う

The Kiss – Gustav Klimt – Google Cultural

油絵と箔、一見ミスマッチのようでいて、実はとても相性がいい組み合わせ。

重厚な絵の具の中に、キラリとした箔を加えると、クラシックな印象にも、幻想的な現代アートにもなります。

使い方はシンプルで、絵の具が乾いてから、箔専用のサイズ(接着剤)を塗り、そこに箔を軽く押さえて貼るだけ。

筆跡の中に光を忍ばせると、作品に立体感や奥行きが生まれます。

アクリル画に使う

ポイント使い。

アクリルは水性ながら耐久性があり、メディウムとの相性も良い万能選手。

ジェルメディウムやグロスメディウムを使えば、箔を簡単に貼ることができます。

特にカラーフォイルやホログラム箔との相性は抜群で、ポップなアートから幻想的な作品まで自由自在。

乾きが早いアクリルだからこそ、層を重ねながら箔を部分的に重ねたり、削ったりする技法も楽しめます。

本物の金?それともフェイク?

箔にはいろいろな種類があります。価格や質感、扱いやすさもさまざま。

ここでは絵に使える代表的な箔をご紹介します。

本金箔(純金箔)

金そのものを極限まで薄く伸ばした伝統的な箔。

和の絵画で多用されており、経年変化に強く、時間とともに美しさが増すのが特徴です。

一枚ずつ職人の手で作られ、独特の柔らかい光を放ちます。

ただし高価で扱いも繊細。箔移し用の「箔紙」や「箔刷毛」が必要になることも。

洋金箔(合金製)

銅や亜鉛を混ぜた金属箔で、本金に近い色味ながらリーズナブル。

酸化で多少くすむことはありますが、加工しやすく初心者にも向いています。

練習や、量を使いたい作品におすすめ。

金色のトーンに微妙な違いがあるので、選ぶ楽しみも。

ホイル箔(アルミ蒸着など)

クラフト界で人気の、シール感覚で使える箔。

カラーや柄も豊富で、ピンクゴールド、シルバー、ホログラム、パールなど選び放題。

アイロンや熱ペン、専用接着剤を使って転写できます。

カジュアルに取り入れたいアクリル画や、遊び心のある装飾アートにぴったり。

転写用箔・シートタイプ

アイロンやこすり転写で貼れる箔。

細い線やロゴなど、繊細なモチーフに向いています。

あらかじめ粘着剤が仕込まれているものもあり、初心者でも使いやすいのが魅力。

同じ「金色」でも、素材や厚さ、仕上がりのツヤ感が違うので、実際に比べてみると楽しい世界が広がります。

本物ならではの奥行きを取るか、扱いやすさと色の自由さを取るか。

使う人のスタイルによって、ぴったりの箔がきっと見つかります。

絵にどう使う?箔押しのやり方とコツ

愛用してる画材↑

初心者さんにおすすめの接着剤はシャバシャバしていて、細かい線や、広い面積にも使える箔押し専用糊。

箔を貼る手順は、基本は「接着剤を塗って、乾かして、箔を乗せる」。

一見シンプルですが、“乾き具合”の見極めがポイントです。

●基本の貼り方(油絵・アクリル・日本画)

貼りたい場所に“サイズ”を塗る  サイズとは箔用の接着剤で、市販のものが便利です。 少し乾かす(完全に乾かさない)  表面がベタつかず、でもまだ粘着力がある“半乾き”の状態がベスト。指で軽く触って、糸を引かない程度が目安です。

箔をそっと置く  空気が入らないように、ふわっと置きます。指ではなく、毛の柔らかい筆かコットンで上から軽く押さえるとしっかり定着します。 余分な箔を払い落とす  乾いたあと、ブラシや柔らかい布で余分な箔をやさしく払います。

この方法は、日本画の金泥のような使い方もできますし、油絵の上に金属の質感を足す場合にも応用できます。

初心者のうちは、小さい面積から練習するのがおすすめです。色紙サイズなどに試してみると、感覚がつかめます。

必要なら仕上げに保護(オプション)本物の金箔は酸化しませんが、模造箔やホイル箔は酸化・変色しやすいです 定着させたいときは、透明のニス(マットまたはグロス)をそっとスプレーでかけます(筆で塗ると箔が溶ける場合あり)

初心者におすすめの道具

模造箔(色付き箔) 箔用糊

平筆(柔らかめ)・細筆(サイズ塗り用)

綿棒・

定着用スプレーニス(必要に応じて)

アート作品での箔の活用アイデア

カラフルな箔

実際の作品の中で、箔はどんなふうに使われているのでしょう?以下は、絵画やアートワークでの応用例です。

花の中心部や、葉の光を表現(自然モチーフとの相性◎) 背景にうすく貼って「空間の奥行き」を出す キャンバスのふちだけ箔を貼って、額縁のような演出 人物画で、アクセサリーやボタンなど部分的にキラッと コラージュ作品に混ぜて、質感の違いを出すなどなど、

特にアクリル画との相性がよく、乾いた上からも貼れるので途中で雰囲気を変えたいときに重宝します。

最後に:自分の作品に“光”を加える感覚で

箔は描いたものに対して、“意味のある光”を与える技法でもあります。

物語の中の一瞬を強調したいとき。

誰かの記憶に残るような輝きを添えたいとき。

ただただ、美しいものをつくりたいとき。

そのすべてに、箔はこたえてくれます。

難しそうに見えて、実はとても自由な技法。

ぜひあなたの作品にも、小さなひかりを加えてみてください。

それでは今日はこの辺でまたお会いしましょう。ひつじでした。